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平成14年度 第1回PFI研修会「神戸市におけるPFI事業への取り組み」
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神戸市企画調整局調査室 室長 谷口 時寛
 
【はじめに】
 只今、ご紹介いただきました神戸市企画調整局の谷口と申します。本日は、このような機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。


 それでは、一応予定の時間が約50分ということでございますので、神戸におけるいろいろな取り組みにつきまして、実際に我々としてやりましたことのご説明をさせていただきます。論点につきましては、先ほどみずほ総研の福田様から大体整理していただきましたので、それをベースに、どのような形でやったか、整理をしていただければいいかなと思っております。


 それでは、お手元の資料24ページでございますが、こちらの方に私どもの取り組み、それから具体的事例としまして、国民宿舎である摩耶ロッジの整備等の事業、それからもう一つ、海の方にございます、いわゆるヨットハーバーでございますが、マリンピア神戸フィッシャリーナ整備事業、この2つをやっておりますので、それらにつきまして、具体的に、できるだけ細かい話をさせていただきたいと思っております。


1.庁内推進体制
 まず、本市における取り組み体制等、一般論につきましてでございますが、ご存じのとおり平成7年に、私どもの方、大震災に遭いまして、今日ご出席の皆様方を始め、全国から大変なご支援をいただきましたこと、改めまして、この場をお借りしまして御礼申し上げます。


 そのときの被害は神戸市全体で民間も入れまして約10兆円ぐらいになり、私ども公共団体としましても、災害関連ということで約3兆円の公共事業を行ってまいりました。その結果、補助金等をいただきましたが、起債がその裏負担ということで、特例等を認めていただいて発行はできたのですけれども、その償還がピークになりますのが、平成14年、15年、16年、この3年ということで、実は起債制限比率を超えておりまして、今のところ21%ぐらいの起債償還ということで、財政的に非常に苦しくて、先般の日経新聞の自治体向け格付でもEランクと。要するに、ほとんど破産状態ということで非常に厳しい状況にあるということを前提にお考えいただきまして、まず事業を考える際に起債でやるのか、あるいは国の補助をとってくるのか、自治体ですからいろいろな手法がございますが、起債ができない状況というのがございます。それがPFIを進めるある程度の引き金になっているというような状況がございます。


 その危機的な状況の中で、私どもとして今後事業を取り組む際に、PFI手法が一つの有効な手段であるというような考え方のもとに、ここにございますように平成12年5月、PFI推進会議というものを設けてございます。これは国の方の動きにもあわせまして、自治体としてどういった形でPFIに取り組むのかということで、関係局の課長クラスによります会議をしまして、ここにございますように12年から各自治体での取り組み状況、それから国の動向等を情報収集するとともに、具体的なモデルということで、摩耶ロッジ等の実際の進め方等を検討しております。


 実務につきましては、直接私ども企画部門が調整はいたしますが、財政と担当する直接の事業部局、3者による協議をしまして、最終的な意思決定は財政的な面と事業における国庫補助、あるいは起債等の予算的な問題等を勘案いたしまして、決定をいたしております。


2.取り組み状況
 こういった事例も含めまして、関係局にPFIにつきまして理解を求める努力をしておりますが、昨年12月に「PFIの活用について」というものをまとめております。当初、ガイドライン的にやりたかったのですが、実を言いますと、まだそこまで庁内的にコンセンサスが得られないという状況がございますので、進め方につきまして、報告書という形でまとめまして、各局にそれぞれ具体の事例等を含めて、問題点と先ほどお話がありましたような点、一般的な理解として、最低限ご理解いただきたいということで報告書をまとめて、それぞれに配ってございます。


3.実施事例
 それでは、具体的な事例といたしまして、既に実施してございます摩耶ロッジ、マリンピア神戸、それから今後14年度実施する中央卸売市場本場再整備につきまして、概略をご説明申し上げたいと思います。


(1)摩耶ロッジ整備事業
 ①事業の趣旨

 資料25ページをお開きいただきたいと思います。まず摩耶ロッジでございます。これは皆様方の自治体等にもあるかと思うのですが、いわゆる国民宿舎で、建物自体は約30年前にでき上がっておりまして、それ以降、営業いたしておりましたが、平成7年の地震により被害を受けたこともありまして、運営を休止いたしておりました。


 ここの土地につきましては、瀬戸内海の国立公園に入っておりまして、この建て替えに際し自然公園法の適用がございます。そこで、私どもとしましてもいろいろ検討し環境省等の同意を得て、改修、あるいは全面建て替えも可能ですが、自然公園法で相当厳しい規制がございます。現在の面積を超えてはいけない、あるいは緑についても減少してはいけない等、制約がございます。


 それから、先ほどから話が出ておりますように、あくまでも国民宿舎ということでございますので、公の施設としての位置づけ、あるいは行政財産としての貸付での問題、こういったものもございまして、この建て替えにつきましては、どこまでをPFIで行うかという点、いろいろ議論を重ねておりました。


 あくまでも民間の資金、経営能力、技術的な能力を活用させてもらって、魅力ある宿泊施設を整備して、低廉で質の高いサービスを提供したいというようなことが今回の基本的な目標になってございます。


 建物の概要を書いておりませんが、この建物につきましては、鉄筋コンクリートの2階建てで、一部地下1階、敷地が約2万 3,000平米ございまして、そのうち延べ床が 2,300平米、自然公園の中では、なかなか施設の増築等難しいということで、こういった規模となっております。


 建物自体は30年前に建っております。すべて和室の36室ございまして、収容人員は 150名というような施設でございます。ここに書いておりますように具体のPFIの中身といたしましては、まず事業期間を20年としています。これはなぜ20年かと申し上げますと、先ほど申し上げましたように、この建物は約30年前にでき上がっております。ですから、建物の償却等を勘案しますと、約50年が限度ではないかというようなことで、30年経過しておりますので、残り20年間であれば耐えられるであろうというようなことで、期間20年を想定いたしております。


 ②PFI事業の範囲等
 それから、PFI事業の範囲といたしまして、この整備の業務につきましては、ここにございますように建物整備工事、それから地震等に耐えられるような耐震補強、それと設計、工事監理等、こういった建築関係の業務、それから維持管理、運営ということで、当然ながら保守修繕、警備、清掃、植栽、設備、利用受付、使用料の徴収、企画運営、こういったものについてもPFIの範囲とさせてもらっております。


 それから、付帯事業と書いてございます体験学習事業、それから飲食、物販、入浴、これらにつきましては、PFI事業者の収益源として、付帯事業としてやっていただくもので、これはPFIの対象外で考えております。この事業につきまして募集等を行ったわけですが、基本的に事業方式としましては、先ほど出ておりましたBOT、BTOとかいろいろございますが、これにつきましてはBTOという方式で行っております。


 ③事業スキーム
 次のページにスキーム図等を書いておりますが、これをご覧になりながら、ちょっとお聞きいただければと思います。これは施設改修を目的といたしておりますので、基本的にトランスファーはなしと考えております。事業方式につきましては、ジョイントベンチャー型で行っております。単純なサービスではなく、整備費を私ども負担いたしまして、PFI事業者には個々のサービスの提供をしていただくというようなことで考えております。


 それから、この事業スキーム図に「整備業務(総額5億円上限、20年間均等支払)」とございますが、私どもの方、建築系の営繕の方で見積もりをしまして、当初求めております性能に必要な金額を積算しまして、それから実はもう1ヵ所、私ども国民宿舎をもっておりますので、そういったものの事例等を勘案いたしまして、再整備経費として一応5億円ではないかということを積算いたしました。それを上限に20年でお支払いをさせていただくということでございまして、年間 2,500万円、これを20年にかけてPFI事業者にはお支払いをするということにしております。


 それから、「PFI事業者(鹿島建設)」と書いておりますが、そこから施設利用者に対しましてサービス提供を行います。ただ、このサービス提供に対します宿泊使用料、先ほど言いました付帯事業は関係ありませんが、施設の分にかかわります宿泊使用料、これにつきましては公の施設でございますので、条例で定めておりまして、それを施設利用者からPFI事業者が宿泊使用料として、この分を私どもに代わって収入しまして、それを一旦、神戸市の方に宿泊使用料として払い込みをしていただきます。その支払いいただきました宿泊使用料でもって、この左の方に書いております維持管理・運営業務、この分を宿泊使用料収入相当額としてお支払いするということになります。これは公の施設ですので、お金の流れがちょっと面倒なのですが、一旦PFI事業者を経由して、私どもにいただきまして、また出すというようなことになっております。この国民宿舎は、平成13年7月にオープンしておりまして、3月までの実績で約 6,900万円の収入がございまして、そのまま維持管理・運営の方の経費としてお支払いをしております。


 もう一つ下のところで、目的外使用許可ということで付帯事業、これは許認可を毎年するのですが、ここがPFI事業者の取り分といいますか、一番インセンティブの働いているところでございまして、ジャグジーの温泉とレストラン、学習センター、売店、ここの収入につきましては目的外使用ということで、事業者の方にすべて入るというようにしてございます。


 ここで事業方式としまして、先ほどちょっと申し上げましたが、BTO方式にしています。これは仮にBOTでやりますと、固定資産税が民間事業者の方の負担になりまして、事業として私どもの方で積算しましたら、この税負担を入れますと、バリュー・フォー・マネーが達成できないということで、その分につきましては私どもの方でもちまして、運営の方の分でバリュー・フォー・マネーを達成してもらうということから、この手法をとっております。この辺はいろいろと建物の性格、それから事業の性格等によりまして、異なってくると思っております。先ほどありましたPSCの算定で、公共で整備費は負担するというように考えましたが、維持管理・運営、仮にこれをやる例としまして、私どもには先ほど申し上げました外郭団体が運営する国民宿舎がございますので、そこの利用料金等を勘案して検討いたしました。それで結局、バリュー・フォー・マネーは約6%ということで、PFIで実施しようということになって、この手法で進めてございます。


 ④リスク分担
 リスクの分担については、特に先ほどの福田さんのお話の中で、大規模修繕というようなお話がございましたが、これにつきましては、大規模というほどのものはないと私どもは解釈をしておりまして、すべて事業者のリスク負担ということで契約しております。ただ、急激な物価変動につきましては、市と事業者でリスクを分担するということにしておりますし、金利変動、先ほど大体15年が限度ではないかというようなお話がございましたが、20年の中で急激な金利変動があった場合、このリスクは実は事業者にすべてお願いしております。私どもではリスクをもちません。


 そうしますと、この事業で一体行政としては何のリスクをとるのかということですが、これにつきましては、この施設整備に関して、仮に住民の反対運動あるいは訴訟があれば、そのリスクは私どもでとりますし、市の責任によって事業内容を変更する等、当たり前ですけれども、私どもの都合で何か変更を行うということであれば、そのリスクは私どもでとるということにしております。


 詳細なリスク分担等につきましては、いろいろなところで出しておりますが、主だったリスクとしましては募集要項でリスク分担表を用意しまして募集の際に提示しております。例えば先ほどの不可抗力、大規模な災害等による負担につきましては、市と事業者双方でリスクを負担しております。それから、法令等の変更、これは私ども市の条例とか規則によるものは私どもで負担しますが、それ以外は事業者負担ということで、法令等の変更につきましては2つ分けてございます。それから、事業の中止、延期、こういったものも私ども市の責任によります。遅延とか中止は私どもでリスクをとりますが、それ以外は民間事業者ということで、この辺の分担については交渉が必要な部分でございまして、いろいろと時間のかかるところではございます。


 ⑤事業スケジュール
 次にスケジュールを掲げておりますが、ちょうどPFI法等いろいろ動きがございまして、ここに書いておりますように、スケジュールは非常にタイトになってございます。これはちょっと私どもの事情で申し上げますと、このスケジュールの一番下、平成13年7月13日オープン、それから13年3月17日にグラスハウスオープンということで、実は正式にオープンしましたのは7月でございますが、3月に一部営業を開始しております。


 震災後、地元の活性化あるいは復興事業が進む中、実は六甲摩耶地区のロープウェー、ケーブルだけが復旧・復興しておりませんでした。何とかこれを早期に復旧・復興したいということで、民間事業者の営業を譲り受け、復興を行いました。その復興の日が3月17日でして、鉄道はできたけれども、上の施設ができてないのは困ると、どうしても13年3月にオープンをさせたいということで、この事業を始めております。


 そういう意味で、この日から遡ってスケジュールを作っておりますので、8月2日に実施方針を公表いたしまして、その5日後に募集要項等を配布して、その後3日後に現地説明、申し込み受け付けが8月21~25日ということで、実施方針の発表からわずか20日ぐらいで申込受付をしまして、その後、提案受付までも実施方針を発表してから1ヵ月半もないということで、これは通常のPFI事業からいきますと非常に短い期間になっております。これは今申し上げましたようにオープンの日が決められていること、それから制度自体非常に流動的でして、私どもも勉強しながら駆け足でやって、議会、特に12月、3月市会で債務負担行為、これも逆算して、どうしてもこの時期に債務負担をとらなければいけないという非常に厳しい日程の中でやりましたので、本来であればもう少し余裕のあるスケジュールでやるべきものではなかったかと思っております。そういう意味で、仮に皆さん方のところでどうしても早くしたいというのであれば、このスケジュールでもできます。ただし、事業としては既存のものがございまして、予算的には5億円程度のものということになりますけれども、こういったことでも実施できた事例があるということで、お考えいただければと思っております。


 ⑥提案審査
 それで、審査基準等については資料をお付けしていないのですけれども、一応公募型プロポーザル方式ということで、ここに書いてございますように提案書の受け付けをいたしましたら、6グループから提案がございました。それで、今回のこの提案の審査については審査会を開きましたが、この審査会のメンバーとしましては、学識経験者でも特に法律、経済ではなく、観光分野、ここは観光施設という位置づけでございますので、観光を専門にされています学識経験者、それから弁護士、公認会計士、ファイナンス専門家、地元の観光協議会、また今回につきましては地元の代表も入ってもらっております。それから市の職員を加えまして、ここにございますように10月3日と16日、2回に分けてプレゼンを受け、審査基準決定をして優先交渉順位を決めております。


 具体的な審査基準につきましては、3つに分けてございます。施設計画・事業計画・収支計画、この3点に分けまして個別評価を行っております。例えば施設計画で申し上げますと、自然公園の中ですので、外観や内装、バリアフリー、環境対策、そういった項目を挙げておりますし、事業計画では料金体系、それぞれの収益事業の内容、体験学習事業の内容、そういったものを計画として挙げてもらっております。収支につきましては、先ほど申し上げましたリスク分担、企業の経営状況等、いわゆる資金的なものに関するもの、それから最後、市の財政負担、そこまでを入れて審査項目にしております。


 これら3つの計画について、それぞれ5段階評価とし、施設計画を全体の20%、事業計画を30%、収支計画を50%という比重にしまして、点数制にして審査を行いました。


 この事業で、質問書受付ということで、いろいろ質問等がございましたが、募集要項に対する質問は117件ございました。初めてのことですので、いろいろな質問がございます。例えば、さっき建物でいいました耐震補強工事、どういった形の耐震補強か。地震でどれぐらいのマグニチュードか等の問題、それから費用負担の考え方、使用料の収入の取り扱い、税の軽減措置、審査基準自体、どういう評価の配分であるかとか、メンバーは誰かとかいう話とか、契約の関係ですと、リスク分担の考え方、事業破綻時の対応等々ございます。


 これらにつきましては、この事業スキーム、右にございますアドバイザー、これは地元のシンクタンクということで、当時のさくら総研にお願いしておりまして、こちらの方でいろいろな形での資料作成、それから基本的な情報収集等をしていただきまして、 117件あります質問について回答をさせていただいたということでございます。


 ⑦事業成果
 PFIを導入いたしまして、和室ばかりで、大部屋で泊まるようなところが新しくなりまして、洋室で30室、全部バス・トイレつきの部屋に変わりました。ただ、大部屋で 150人入っていたのが76人になったということで、宿泊定員は減っております。従来は、お泊まりいただいて、料理につきましては鍋物を食べるとか、昔の宴会風で1泊2食つきで 6,450円でございました。それが新しくなりまして、名称も以前は「国民宿舎摩耶ロッジ」と呼んでおりましたが、新しい名前が「オテル・ド・摩耶」ということで、フランス風になっておりまして、宿泊サービスと、料理につきましてもイタリア料理を提供する。それから、付帯施設としまして、ジャグジーと体験学習施設ということでガラス工芸室を設けてございます。これで1泊2食つきで1万 3,275円ということで、料金的にも約2倍になってございます。


 部屋数が減り、その分、料金が2倍になりまして、実は従来の摩耶ロッジでございますと、小・中学校の修学旅行ですとか、夏の林間学校などに使われておりましたが、このオテル・ド・摩耶になりましてからは、企業の宿泊研修ですとか結婚式にも使われるというようなことで、建物の変化とともに客層も大きく変わっております。


 実際の効果としまして、客室の稼働率が上がっております。従来、この摩耶ロッジというのは、大体54.5%の客室稼働率でございましたが、再整備後は、平成14年3月現在でございますが、63%となっております。場所的に説明いたしますと、摩耶山という山の上にございますので、夏の稼働率は 100%近いのですけれども、2月、3月になるとガタッと落ちるということで、年間ならして63%となっております。これは当初、私どもPFI導入する際の計画として初年度の稼働率を60%と想定しておりましたが、それを上回っているということでして、この手法でうまくいったかなと思っております。


 あと、人数的なものですけれども、従来この宿泊事業につきましては、常勤職員5名、パート13名で、私どもの外郭団体がやっておりましたが、新しい体制になりますと、常勤につきましては5名が7名、2名増えておりますが、パートにつきましては13名が5名ということで、人も相当減っています。それから、飲食事業につきましては、常勤3名が5名に、パート17名が10名になったということでこちらも減っております。


 ⑧課題点
 こういう形で、一応の成果はあると私ども考えておりますが、問題点としまして、バリュー・フォー・マネーの算定の中で、リスク調整をどういう形でするのか。つまり、国民宿舎ということで、実はデータが余りございませんので、バリュー・フォー・マネー算定の際に、今回の事例についてはリスク調整は行っておりません。そこまでのことはなかなかできませんでした。


 それから、急激な金利、物価変動、それから大規模修繕のリスク、これについては一応事業者の方でお願いしておりますが、果たして本当に大規模な修繕が発生したときに、それでいけるのかどうかというのは十分な議論はできておりません。一応の分担として、こういった形になっているということで、今後本当に何かあったときどうするのかというのは検討課題ではないかと思っております。


 あと、今のところ何とか経営はうまくいっておりますが、13年7月にできてから1年弱となり、いろいろと問題点も出ております。その辺は、月1回、私どもの方と運営会社におきまして、マネジメント会議というのを開いておりまして、何が問題かというのをいろいろ聞いております。


 その中で出ておりますのは、宿泊サービス等につきましては、今まで順調にいっておりますが、実は付帯事業のレストランの方で昼間の回転はいいのですが、夜のお客さんが少ないと言われております。それで、その夜のお客さんが少ない原因として、先ほど申し上げましたロープウエー、それからケーブルを使って市街地から山にお客さんを運ぶのですけれども、それが私ども三セクの営業で実は夜5時に終わります。9時~5時で役所仕事ではないのですけれども、需要がないので5時に終わる。ですから、お客さんが仮に6時から食事をされますと帰る足がない。仮にタクシーで帰りますと、市街地まで帰るのに約 5,000円かかります。ですから、その足の確保を何とかしてほしいと言われておりまして、これにつきましては、今後いろいろと協議を進めていきたいと思っております。ロープウエー、ケーブル事業自体も赤字でございますので、私どももなかなかいい返事ができない。ですから、その辺が非常に難しいなと思っております。


 実際、ここで事業主体になっておりますのは鹿島建設でございますが、管理運営会社はジェイコムという会社でございます。これは交通公社、JTBの関連会社でございまして、私ども事業選定の際、JTBの関係で観光客動員ができるであろうということも考慮して、このスキームにしたわけでございますが、なかなか運営の方は収支トントンといいながら、いろいろと厳しい状況になってくるかと思っております。特に初年度はよかったのですが、2年度からだんだん飽きられてくるというようなこともございますので、今後20年、我々もどれぐらいの協力ができるかというのはこれからの課題でございます。


(2)マリンピア神戸フィッシャリーナ施設整備事業
 ①事業の趣旨

 では、次のページでございます。マリンピア神戸のフィッシャリーナ施設整備事業でございます。このマリンピア神戸といいますのは、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、須磨海岸の横、それから明石海峡大橋の神戸側の付け根といいますか、そこにあります人工海浜でございます。ちょうど須磨海岸がございまして、そこから西に行った明石海峡大橋のところで養浜事業を行い、そこのところに実はこれもコンペを行いましてアウトレットモールをつくっております。その横の第2期用地と私ども呼んでおりましたが、そこの施設整備の事業でPFIを行っております。


 この事業の趣旨は、資料にも書いてございますように、漁業生産活動の円滑化を図るため、漁港において漁船と混在するプレジャーボートの分離収容を行うというものです。実はここに垂水漁港という大きな漁港がございまして、ここの漁船と一般の人が持っていますプレジャーボートが混在しておりまして、地元の漁業者からこれを何とかしてもらいたい、不法係留をされているし、漁業活動に非常に影響があるということで、これはかなり前から問題になっておりまして、地元から強い要望が出ておりました。


 それで、これにつきまして、単に収容するというだけでなく、それと併せてマリンピア神戸というアウトレットモールを中心としました人工海浜の魅力アップも図りたい、そのためには海洋レクリエーションで今後需要が見込まれるプレジャーボートを係留するものをここにあわせてつくろうということで、フィッシャリーナ整備事業をPFIで行おうということになりました。これにつきましては、私ども財政的なものもございますし、特にプレジャーボート、こういった分野につきましては、どうも行政は余り得意ではございませんので、PFIでやろうということになりました。


 実は、須磨の方に第三セクターでやっていますヨットハーバーがございます。それにつきましても、改修等につきまして、PFIでやるか、三セクでやるか、内部で検討しておりますが、このフィッシャリーナの成果次第ではPFIを導入したいと考えております。


 このプレジャーボートの係留施設としてフィッシャリーナを整備するにあたり、放置されていますプレジャーボートを私どもで調べましたところ約50隻ございました。この50隻をとりあえず収容できて、それから一般のプレジャーボートをそれ以外に約50隻ぐらい収容するようなものを検討してもらいたいということで、事業の募集を行いました。


 実際のところ契約いたしましたら、放置プレジャー用は50隻分確保していただきましたし、一般プレジャーボートにつきましては92隻、これは事業者としての採算、収支、そういったものから施設等の配置を考えて出された数字でございます。


 ②PFI事業の範囲等
 それで、中身としましては、この係留施設につきまして、設計・整備・工事監理・維持管理、それと運営、これをすべてPFIでやりたいということで事業期間は20年で募集しました。これも先ほど摩耶ロッジで説明しましたが、係留施設を資産としてみて、耐用年数はどれぐらいかというのをいろいろ聞きますと、約20年という答えが出てまいりましたので、私どもとしては資産の耐用年数ということで、20年を想定して事業期間を決めております。


 それから、事業方式につきましては、これはBOOということで、事業期間終了後、施設を撤去していただきます。今申し上げましたように耐用年数が20年ということですので、事業期間が終わり次第撤去して、20年後にもう一度考えようということです。


 それから、事業の形態は独立採算型、先ほど公共駐車場の例がありましたが、これはヨットの公共駐車場みたいなものでございまして、独立採算でやっていただきます。ただ、岸壁ですとか構内の防波堤、こういったものは公共として漁港の整備事業で行うということにしております。


 ③事業スキーム
 次のページをご覧いただきたいのですけれども、事業のスキームとしましては、先ほどちょっとご説明させていただきましたが、これはPFI事業者としてヤマハ発動機が最終的に選ばれておりまして、こちらが施設利用者に対してサービスを提供して、その分、係船の使用料を支払っていただくということになります。ただ、これも公の施設でございますので、PFI事業者が利用者から一旦使用料を徴収した後、市の歳入として払い込みを受けるということになっておりまして、それをまた市が施設管理料としてPFI事業者に払うという仕組みをとっております。


 この中で水面使用料につきましては、放置艇を私ども収容する間は減免しましております。(平成13年10月から14年3月)
 バリュー・フォー・マネーの算定につきましては、市直営方式と比較して、それから他の類似施設、民間事業者、そういったものといろいろヒアリングをしますと、大体25%と、結構これは大きな数字が出てまいりまして、今申し上げましたように、横に私どもヨットハーバーを持っておりますので、あまり言うといいのかどうか微妙なところなのですが、そういう数字が出てきております。


 ④リスク分担
 リスクにつきましては、金利の変動、これについては事業者の方にリスク分担をお願いしております。そのほか、競合いたします施設ができた場合や需要予測が外れたという場合も事業者負担としています。ただし、放置艇の分につきましては公共の負担、それ以上のプラスの分、これらにつきましては事業者の負担にしております。


 それから、技術革新等によります施設整備の陳腐化、そういったものについても事業者の方に負担をお願いしております。20年でどうなるかというのはありますが、今のところでは、現在の施設で皆さん満足されておりますので、予定どおりお客さんが集まっております。


 ⑤事業スケジュール
 スケジュールにつきましては、ちょっと前のページにお戻りいただきたいのですけれども、これは先ほどと違いまして、1度PFIを実施しているという実績等ございましたので、ちょっと余裕をもっております。去年の2月に実施方針を発表いたしまして、その2週間後、3月16日に募集要項を配布しております。その後、議会で債務負担をとりまして、4月5日に募集要項をもって現地説明会を行いまして、5月7~11日に提案書の受け付けをしております。要項配布から約2ヵ月間の期間を置いております。その後、審査基準を決めまして、プレゼンが5月25日で、30日に優先交渉順位を決定したということでございます。オープンが13年10月ということで、これもスケジュールが短いとか、いろいろな声はあるのですけれども、私どもとしては余裕をもってやらせていただいたと思っております。


 ⑥提案審査
 審査につきましては、先ほどと同じでございまして、公募型のプロポーザルで学識経験者、今回は都市計画、あるいは環境分野の学識経験者、弁護士、公認会計士、ファイナンス専門家、それから今回も地元の漁協の代表ということで、地元の人に入ってもらっております。それと私ども市の職員ということでやっております。


 この審査項目としましては、先ほどと同じでございますが、施設整備計画、維持管理・運営計画、収支計画、こういったものをベースに、それぞれにつきまして5段階評価ということで行っておりまして、施設の整備計画が今回は25%、維持管理・運営が30%、収支が45%という比率で配点を行っております。


 ⑦事業成果
 今現在、稼働率等で申し上げますと、今年の5月現在で60%の利用率になっております。計画収容数が 142隻でございますが、そのうち84隻契約をいただいております。今後、これは提案者でありますヤマハ発動機の方の話ですが、自分のところで売ったボートについては、神戸だったら、ここにとめてくれということで、売る時にセットでお客さんを集めてくるという方法もあるのではないかと思います。なかなか行政ではこういうことはできないのですけれども、そういったご提案をいただいてございます。


 ご参考に、利用料につきましては、月額の利用料、これはいろいろなケースがあると思いますが、私どもが横にもっております須磨のヨットハーバーですと、例えば8メーターバースのヨットですと、3万 6,700円いただいておりますが、民間ベースでいくと2万 7,500円ということで、こちらの方が安くなっておりまして、特に15メーターバース、一番大きいのですと、須磨は10万 8,000円もらっておりますが、こちらでは7万 8,750円ということで、かなり料金の差が出ております。これはなかなか難しい問題で、この須磨のヨットハーバーにつきましては、今後の改修の際、どうやっていくのかというのが課題になってまいります。


(3)中央卸売市場再整備事業
 それから、今、検討しておりますのが中央卸売市場の再整備というのがございます。実は、今の国民宿舎、それからフィッシャリーナ、これは事業費でいいますと5億円、それからフィッシャリーナで1億円ということで、ちょっと変な言い方ですが、とりあえず最初手がけるには非常に金額的、規模的にやり易かったのですが、今後やろうとしています中央の卸売市場、この事業は今あります施設約4ヘクタールを東側に移転集約しようとするもので、実は既存のものと2ヵ所に分散しておりますものを、片方、西側部分をつぶして、東側の海面を埋め立てて、そこへ移転するということで、本格的な公共事業になっております。整備内容としましては、加工場とか保冷庫、倉庫、そういったものを新しくつくろうということで、現在あります施設の移転、埋め立て、整備等をPFIでやろうということで検討しております。概算事業費としては、約 160億円を想定しております。これまでが5億円と1億円ですから、桁違いになります。


 実は13年度に事業化を決定しまして、PFIでやろうということで、今年度実施手続に入っております。ただ、なかなか大変な事業で、現に事業者もおられますので、今その辺の地元調整にも入っております。市場の上には関係者の住宅もございますので、住宅の移転交渉と建物に住んでおられる方、利用されている方の意向調査、それから交渉等ございますので、その辺も踏まえて今の計画では今年度実施手続をしまして、来年度実施設計、それから平成16年から18年度にかけまして、施設を順次建設してまいりまして、19年度に全体の供用開始ということで想定しております。この事業の体制としましては、市場の方に担当部長以下、職員としては約5名ぐらいしかいないのですけれども、チームをつくりまして、事業の実施について検討しております。これにつきましては、国の方、農林水産省の方も、市場の建て替えでは全国初のPFI事業になりますので、全面的なバックアップをいただけるということになっておりまして、今後私ども市としても全力を挙げて、PFIとして実施できるよう努力していきたいと思っております。


4.その他
 その他の事業につきましても、財政状況等厳しい折、できるだけPFIでやるということで、今年度財政当局を含めて来年度に向けての検討を行っております。私どもとしましては、非常に厳しい状況で、PFIも行いますが、その他性能発注もございますし、余談ではございますが、私どもでは区民センター、文化センター、こういったものの運営につきましてはNPOに委託するなど、いろいろな手法を考えております。そういった手法の一つとしてPFIが非常に有効ではないかと思っておりまして、いろいろな形での民間活力の導入を図りながら、施策展開を行っていきたいと思っております。


 時間が長くなりましたが、以上で私ども神戸市の事例紹介を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

 

【平成14年度第1回PFI研修会(平成14年5月29日名古屋市で開催)での講演概要】
  
 
講 師 紹 介 


神戸市企画調整局調査室 室長 谷口 時寛(たにぐち ときひろ)             
 
略歴: 昭和52年4月  神戸市採用、
           以後、市長室主幹、長田区まちづくり推進課長、
           産業振興局経済振興課長を経て 
    平成13年4月~ 現職
 
連絡先: 〒650-8570 神戸市中央区加納町6丁目5-1
  電 話:078-322-6315
  ファクシミリ:078-322-6010
  E-mail:tokihiro_taniguchi@office.city.kobe.jp