株式会社三菱地所設計 都市開発マネジメント部
PFIコンサルティングチーム チームリーダー 城 一眞
同 鈴木直樹
【はじめに】
本日は、私と一緒に業務をしております鈴木と2名でご説明をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ご説明に先立ちまして、三菱地所設計という会社について簡単に自己紹介させていただこうと思うのですけれども、三菱地所設計という会社は、丸の内の不動産会社でございます三菱地所から分社・独立いたしましてできました建築設計事務所でございまして、先ほどご説明ありました中央合同庁舎第7号館のテクニカルアドバイザーを含めまして、このようなPFIのコンサルティング等もさせていただいている会社でございます。
これからご説明に入らせていただくわけでございますが、皆様方もPFI並びに市街地再開発について、いろいろご研究、ご検討をされておられると存じますけれども、市街地再開発というものについて、これをPFIでやっている事例は――後でもご説明いたしますが――それほど多くもないという中で、こういうものについて紹介をしているような資料は、そんなに多くもないのではないかなと。特に公の機関で書かれているようなものはないのではないかと思っております。
本日は、先ほどご説明されました国土交通省様もこの席にいらっしゃるわけでございまして、7号館のご説明をされたわけですが、私どもがご説明させていただく内容につきましては、あくまでも1コンサルタントが考えた見解ということでございます。たまたまご同席いただいておりますけれども、国土交通省様そのほかと意見の調整等を事前にさせていただいているわけではなく、あくまで1コンサルの見解であるということをあらかじめ申し述べさせていただきたいと思います。
それから、これからご説明させていただく内容でございますが、資料をみていただきますとわかるように、最初の方は市街地再開発ということについて、ページを割かせていただいております。「再開発のあらまし」、「再開発とはどういうものなのか」は皆様方もよくご承知いただいているとは思いますけれども、その辺を少しおさらいがてら簡単にご説明をさせていただき、再開発というのも民間事業者が出てきて参画する1つの民活という形になるわけでございますが、では、「それがどんな場面であれば」、「どんな条件であればPFIでも成り立つのか」というあたりを少し検証させていただこうという形で進めさせていただこうと思っております。
【市街地再開発の概要】
今申し上げましたように、まず市街地再開発の概要でございます。市街地再開発というのは都市計画法並びに都市再開発法に基づく事業ということで、実際の事業の進め方については、特に都市再開発法によって規定されているということはご承知のところだと思います。都市再開発法は既成の市街地を一体的、総合的に整備をするというところで、土地を合理的かつ健全な高度利用を図ることにより公共の福祉に寄与させるというのが、事業の目的となるということです。
そのときに、調整保護の方法としては大きく2つの考え方がありまして、土地区画整理に近いような形で立体換地を考えたような権利変換という形、それから、土地収用に関する考え方ということで管理処分という形の大きく2つの手法が採用されているというところだと思います。
複数敷地を共同化して高度利用することによりまして、こちらの方にもありますけれども、幾つかの敷地の部分にこのような街区を共同化させることで高度化させるということにより、公共用地を生み出す、道路、公園等の公共施設を整備していくといったものが市街地再開発であると。高度利用で新たに生み出しました床、保留床でございますけれども、保留床を処分することによって事業費を捻出していくというものが、市街地再開発の考え方であるというところだと思います。
続きまして、市街地再開発事業は、この辺もよくご承知の第1種市街地再開発事業、権利変換方式のもの、それから、第2種市街地再開発事業、管理処分(用地買収)方式のものという大きな2つの方式がございます。第1種市街地再開発事業は、事業施行前の各権利者の権利の種類、それから、資産額に応じまして、でき上がった後の建物の敷地、それから、床に関する権利を与える。これが権利床といわれているものでございますが、それ以外のものが先ほど申し上げました保留床になる。皆さんの敷地であらかじめもたれている権利というものが敷地ないし床になりまして、それ以外のもの、余剰の部分が保留床になると。それを売却することによって建物の費用を捻出する、それが第1種の権利変換方式といわれるものでございます。
もう1つ、第2種市街地再開発事業は、各権利者の権利を個別にまず用地買収をして、最終的には所有権というものも付与されるということで、管理処分(用地買収)方式と呼ばれているものというところでございます。
今申し上げたもので、今度はどういう方が施行者になり得るのかというあたりもちょっと含めたものがこちらの表でございます。これでおわかりのように、第1種市街地再開発事業でありますと、個人施行者、再開発組合が施行者になり得ると。それから、地方公共団体さん、都市整備公団さんというのは1種でも2種でも施行者になり得るというところになると思います。
続きまして、冒頭にもちょっとお話しさせていただきましたが、この市街地再開発事業については、もともと組合員で土地をもたれている権利者以外の方も積極的に事業に参画していただいて、その方々のご協力のもとに事業を進めてこうという考え方がございまして、参画の度合いにより、いろいろな制度が従来からできているというところでございます。
次のところでもご説明いたしますが、参加組合員、特定事業参加者、事業代行方式、1種でありますとか特定の業務代行方式、それから、特定建築者制度、いわゆる特建者制度でございます。4番目に事業協力者、このような制度があるというところでございまして、事実上、再開発というのは、民活事業の1つであるというところであります。従来の再開発でもこのような民間事業者が実際には参画をして進めているということで、この後PFIに進んでいくわけですけれども、では、PFIではどういうところが実際に従来と違ってくるのかというあたりも後で簡単にご説明できたらと思っております。
今、タイトルだけで申し上げました参加組合員、特定事業参加者、業務代行、特建者、事業協力者につきまして1つずつ制度の確認をさせていただこうと思います。
まず参加組合員、1種の場合の参加組合員、2種でありますと特定事業参加者というところでございますけれども、組合施行の場合につきましては、保留床の取得予定者というものをあらかじめ組合員として迎え入れておくということで、これが参加組合員という形になるわけでございます。これは再開発組合を設立するときにあらかじめ定款の方に定めておく必要があると。この参加組合員になる民間事業者は、組合に対して取得予定の保留床の価格に応じた負担金、参加組合員負担金を事業の進捗に合わせて支払っているということでございます。
平成10年の改正によりまして、地方公共団体さん、それから公団さん等が施行される再開発事業において、参加組合員というか、それは特定事業参加者の方になりますけれども、そういう地方公共団体さんや公団さんがおやりになる再開発事業においても、同じような立場で民間に入っていただく特定事業参加者となるような制度改正がなされたというところでございます。民間事業者の方がみずから組合の中に入っていって、積極的に再開発事業を進めていくというものがこの参加組合員でありますとか、特定事業参加者という制度だというところでございます。
2番目に業務代行方式でございますけれども、民間活力の活用によりまして市街地再開発事業を積極的に進めていくという目的は同じでございますが、施行者並びに施行予定者が業務の相当部分、ある部分につきまして民間に委託をするというところがこの業務代行方式という形になります。
民間に委ねる範囲としましては、組合等の事務局の業務でありますとかコーディネーター業務、調査・設計の業務、工事が進んだ場合の工事監理業務と工事そのもの、工事施工業務と大きく5つに分かれると思います。そこで、工事を含まないものにつきましては一般業務代行、そして、工事を含める場合については特定事業務代行といわれるものでございまして、特定業務代行の場合につきましては、未処分の保留床が出てしまうと取得をしないといけないということが定められているというところでございます。
あと2つ、特定建築者、特建者でございますけれども、特建者は再開発事業において関係権利者の権利の確実な保全を図るという観点から、建築物の建築は従来であると施行者がみずから行うことが大原則になっているわけでございますが、民間活力を積極的に活用させていこう、それから、施行者の資金調達の負担額を減らそうという観点から、この特建者というのは施行者ではないわけでございますけれども、施行者ではない者にも建築物を建築させようというところがこの特建者制度といわれるものでございます。
これも、制度が設けられた当時につきましては、建物のすべてが保留床からなる建物しか特建者はできないよとなっておりましたけれども、平成11年の改正によりまして、保留床が一部でもあればそのような建物、特定建築物を特建者がすることができるということに法律改正がされております。この場合、特定建築者、特建者は特定建築物の一部もしくは全部を取得するということになりまして、権利変換計画の中に定められるということになります。
最後に、事業協力者というのも書かせていただいておりますが、これは、根拠のところに特別の規定はございません。制度的に明確になっているわけではなく、一般的にデベロッパーであるとかゼネコンが将来の保留床取得、それから、工事そのものの受注を目的に、いろいろ手伝っていく者をいわゆる事業協力者と申し上げる、よくいわれている言葉がこの事業協力者ということになります。
【リスクについて】
次に、この市街地再開発事業というのは、もちろんいろいろなリスクがあるわけでございまして、現状の市街地再開発事業であっても、PFIであってもうまく進まない、その辺のリスクが問題になってくる。PFIでいきますと、さらにこういうリスクをあらかじめ明示していく必要があるということで、では、市街地再開発事業においてどんなリスクがあるのか、主なものをちょっと拾ってみました。
まず事業先行リスクということで、実態については事業認可前の費用というものをどうやって回収していくのか、事業がうまくいかなかったときどうするのかというような先行投資の部分のリスクがございます。これは民間コンサルであるとか、事業を推進的、中心的に進めていこうという事業推進者の方が、実際は立替えをするという負担例が多いのではないかと思います。このようなリスクが先行リスクです。
2番目に合意形成リスク、事業が順調に進んでいくのかというリスクでございまして、権利者の方がいろいろいらっしゃれば、合意形成が基本的にできるのだろうかというところで、ここでリスクが発生してくるということになります。合意はとれてもなかなかその合意が進まないということでスケジュール的におくれてしまう、もしくは補償費みたいなものを支払わないといけない。工事費、事業費自体が増大してしまうといったこともここの合意形成リスクから派生的に発生してくる、そういうリスクもございます。
3番目に公益事業リスクでございますけれども、従前の権利者の方が生活をその場でする上でもう一回かかる、公共的、公益的な施設を整備するのに費用がかかるというところでございまして、この辺が保留床を売却することによって確実に元がとれるのかといったようなところが、公益事業リスクということになっております。
4番目は、公益事業リスクも含めて保留床が本当に処分できるのだろうか、事業費全体を回収できるのだろうか、これが一番大きなリスクでございますけれども、そういうところの不確実性というリスクがあるというところでございます。この辺、バブルのときにはまだしも、土地がどんどん下がってきているというところで、当初はこのぐらいで保留床を処分できるだろうということでスタートした事業が、なかなか進まないというところについては、建物は建ちつつあるのに回収ができないというところが、一番問題になってくるのではないかというところでございます。
最後に市場変動リスクということで、今の保留床リスクにもかかわってくるわけでございますけれども、地価が下落することによって分譲や運営といったような事業そのものが進まなくなる、不成立になるといったような問題という部分がある。市街地再開発を進める上では、このようなリスクがあるというところでございます。
実際にある1つの事業が始まりまして、地区計画をつくり事業計画を決定して、権利処分をして工事に入って精算をしていくという一連の流れの中で、どの辺で、今ご説明させていただいた幾つかのリスクというものが発生していくのかを下の方に書かせていただいたわけですけれども、先行リスクでありますとか、保留床の処分ですとかいろいろありますけれども、事業の始まったころからこのようなリスクというものは当然出てくるだろうと。
最後の最後までこのリスクを心配していかなくてはいけないのは、やはり保留床の処分リスク、それから市場変動リスクというものになるだろう。事業が始まったときは先行きがみえないということもありまして、一般的に初期のころの方がリスクというものは当然大きくなってくる。だんだん進んでいけば少し先がみえてくるということで、リスク自体も少なくなってくるのではないかというところがございます。
リスクについて最後に簡単にまとめているわけでございますが、今まででございますと、こういうリスクをだれが抱えていたのかというところは、施行者、民間で参加してくる事業者が、従来であればこの辺のリスクを背負ってきたというところであります。ただ、現在の経済状況を考えていきますと、これからは地価が上昇していかないだろうということで、今までのように地価が上がっていくことを前提に、保留床を売れば何とかなるというような事業参画の考え方では、今後はもう難しくなってくるだろうというのが民間側の意見です。
そうはいっても、行政側、公共側からしてみますと、市街地再開発事業を進めていかないといけない。そのときに民間の資金、ノウハウ等を積極的に活用して効率的にまちづくりを進めていきたいという行政側の考えがある。でも、民間は今までどおりに保留床の処分を考えていくだけだと市街地再開発になかなか乗っていくことはできませんよというところで、ここでバチバチっときてしまう、ここがうまくいかないことで、今までのような市街地再開発はなかなか進まなくなってきている。これが現状ではないかと考えております。
ここまでは再開発事業がどんなもので、今はどういうところに問題がある、どこにリスクがあってどこに問題点があるのかというお話をさせていただきましたが、そろそろPFIのお話もしなくてはいけないので、このあたりから進めていきたいと思います。
【再開発事業とPFI】
まず再開発事業というのは、本当にPFIに乗るのだろうかというところが、再開発事業の何を公共施設等にするのかというところにも、もちろんあるわけでございますけれども、まずPFI法を読んでいきますと、PFI法の第2条第2項の部分で、「特定事業」というところで、特定事業とは公共施設等の整備等に関する事業(市街地再開発事業、土地区画整理事業その他の市街地再開発事業を含む)という書き方がございます。まず、ここで市街地再開発という言葉が出てくる。そうすると、市街地再開発事業というものも特定事業ということで、公共施設等の整備等というものに該当するのではないかと読めます。
もう1つ、PFI法第2条第3項の「公共施設等の管理者等」の部分で、公共施設等の整備等を行う特殊法人その他の公共法人(市街地再開発事業、土地区画整理事業その他の市街地再開発事業を施行する組合を含む)という言葉がございますので、市街地再開発事業を行う主体というものについても、公共施設等の管理者等となり得ると法令上では読めるのではないか。
あくまでもPFI法では、ここには書いていませんが、第1条で社会資本の整備をする、公共施設を整備することが大前提でございますので、市街地再開発事業が端から端まですべて公共施設の整備ということではないわけですけれども、その一部、市街地再開発事業で公共施設を整備するという行為につきましては、PFI法の中でうたっている、PFI事業として実施が可能であろうと法令上、読めるのではないかなと思います。
【PFI事業の現状】
実際にこの辺は皆様の方がよくご承知だと思いますが、市街地再開発事業のPFI、今、PFIそのもので実施方針が出ているのが 120とか 130ぐらいございますけれども、市街地再開発事業関連として出てきているものとしましては、国分寺市さんがおやりになられている市民文化会館の整備、横浜市さんがやられております戸塚駅西口の仮設店舗の整備、それから、先ほどご説明がありました国土交通省さんがおやりになられている中央合同庁舎第7号館の整備、この3つが市街地再開発事業としている、事業手法としてPFI事業を取り込まれている事業でございます。国分寺市さん、戸塚市さんのスキームにつきましては、最後に時間があればご説明させていただこうと思います。
この表には載せておりませんが、PFI法施行前の事業としまして、大阪府の泉大津さんがやられています 松之浜の駅の第1種再開発事業のPFI事業、PFI的事業というのでしょうか、そこの事業も市街地再開発事業の1つといえるのかなということで、それを入れても4つしかないというところでございます。
では、市街地再開発をPFIでやっていく意味、効果はどの辺にあるのだろうかというところを考えていきますと、先ほどバチバチの絵がございましたけれども、行政側、公共施設を管理する側としましては、施設を整備したい、管理・運営を含めて一括で発注していって、民間ノウハウを活用させることによって、少しでも財政支出を減らしていきたいという意向があると思います。
従来の市街地再開発事業でありますと、施設を整備する、でき上がった施設の移管を受けて維持管理をしていく、そこでどうしても分け目があるということです。今までのやり方でいきますと、施設整備と維持管理・運営というものを一括で契約していくのはなかなか難しいのではないか。その辺をPFIで設計・建設、維持管理・運営というものを一括して発注する、それを民間のノウハウ、資金を活用して少しでもコストを下げていく。
次のところにもありますが、質の高いサービスを提供できるというところに行政側、公共側としては、市街地再開発にPFIが導入できるのであればというところではないかなと思います。
もう1つは、これもPFIでよくいわれていることでございますけれども、財政支出を平準化していく。従来型でありますと、工事発注のもの以外については、原則として単年度発注になっているものの、それらをまとめて平準化していくというねらいというものをPFIでできないのかなと行政の方はお思いになるのではないかと思います。
片や民間事業者側としてみますと、PFIは適切にリスクを分担する、官民がリスクを分担していくという考え方が民間側でも浸透しておりますので、あらかじめここさえしっかり分担をしておいてくれて、そのリスクを民間側でもとれるという事業であれば、民間側でも市街地再開発のある一部にPFIを活用してもらって乗り込んでいくということについては、新たな事業機会をつくっていくということで乗り得る話ではないかと思います。
市街地再開発事業にPFIを導入していくところで、どの辺に問題点、注意しなければいけない点があるのかというところでございますけれども、まず1番目は、PFIの主たる目的を考えていきますと、公共施設等の整備、公共サービスの提供が目的でございますので、従来の市街地再開発事業のように保留床の処分をどうするのかと、この辺に着眼をするのではなく、あくまでも公共施設の整備というものをPFIを使っていったときの事業の目的だとお考えいただかなくてはいけないだろうと。
2つ目に、PFIでよくいわれています5つの原則、3つの主義、公共性の原則、民間の経営資源活用の原則、効率性の原則、公平性の原則、透明性の原則という5つの原則と、客観主義、提案主義、独立主義という3つの主義といったものを確保する、その中でも、特に事業者選定等に当たって公平性、透明性の確保が望まれるというところでございます。
3番目に、PFIの再開発ということでございますと、当然、再開発法とPFI法、この辺の手続の整合性をとらないといけないということで、従来の再開発の事業制度に準じて、どのようにやっていくのかという細かい事業手法を決めていかなければいけないというところがございます。
もう1つはバリュー・フォー・マネー、それから、民間の採算性が確保できるのか、この辺も市街地再開発に限定される話ではないということでございますけれども、実際に市街地再開発の中でどこの部分を民間に頼むのか、事業の範囲、事業の期間を考える上で、民間側としては事業採算性がとれないと手を挙げない、プロジェクト・ファイナンスが成り立たないというところがあります。公共側からしてみますと、バリュー・フォー・マネーが確保されないとPFIをやる意味がないというところがございますので、この2つが同時に成立している必要があるというところであります。
そのときに、市街地再開発事業で、再開発自体は建物ができ上がってしまうと終了してしまうわけでございますけれども、それ以降、公共施設等の維持管理・運営も含めて一括で契約をしていくような事業主体でPFIをやっていただかないと、なかなか設計・建設だけでPFIが成り立つというよりは、その辺の維持管理・運営のところも民間のノウハウ等を活用させてLCCのコストダウンを図るというところが必要ではないかと。そのためには公共団体さんの施行で市街地再開発をやっていって、実際に施設を管理していくところも含めてPFIでやらせていくということが必要ではないか。
もう1つ、従来の再開発事業においても民間側のリスクがあるわけでございますけれども、できる限りその辺を軽減させていくという、非常に抽象的な話でございますけれども、何でもかんでも民間というわけではなく、官民でしっかりリスクを分担していくことによって、民間側でも少し乗れるようにリスクの負担を軽減させてあげる必要はあると思います。
再開発事業の中で、では、事業の早いうちからPFIを導入していく場合、それから、事業がある程度進んでからPFIを導入していく場合、どういうところが違うのかというところでございますけれども、事業が早い段階でPFIを何らかの形で導入していくということになると、事業の成熟度が低いということで、これは今までどおり事業化に向けた不確定のリスクが大きいということで、PFIにする場合、ある限られたケース、リスクがみえるところにのみPFIを導入していくことがいいのではないだろうかと。
では、事業が進んでいった中で、事業計画決定以降の段階と書いてございますけれども、そうすると事業が当然みえてくる、後の工程、権利者の合意がどのようになっているのかが確定されてくるということで、でき上がるまでの、完成するまでのリスクの想定が出来てくると。
その辺は可能になるわけですが、創意工夫、業務の範囲が限定されてくるというところで、逆にいうと、こういう段階でいきますと、民間の創意工夫が生かせるような仕組み、この辺を考えてあげないといけないということで、建物でいえば、箱でいえば基本構想あたりのところからPFIをやれば民間の創意工夫が図られているけれども、リスクは大きい。実施設計までやってしまったものをPFIでやろうとすると、VE提案等、民間の創意工夫が図られる範囲は少ないというところに非常に近いのではないかなと思います。
また、事業の流れの中で、特建者でありますとか事業代行、保留床取得者というものが、どの辺の位置にあって、もしこれをPFIでやっていこうとするとリスクはどうなのかというところで、これも前の8ページにあったのと似ているわけでございますけれども、事業が始まったころに特定事業参加者という形のPFIをやっていくということになると、やはりリスクは大きいというところがございまして、事業決定後に特建者制度、保留床取得という形でPFIに参画していくということになれば、後がだんだんみえてくるのではないかということで、民間側の創意工夫の度合いは少ないけれども、リスクは小さくなって乗ってくることは可能であるということにもなるのではないかというところです。
次は、従来型の形の中で民間が市街地再開発事業に参画していける制度として、参加組合員、特定事業参加者、業務代行、特定建築者制度、事業協力者制度――前の4ページのところですが――それを挙げさせていただきましたけれども、では、今回、実際に公共団体施行以外の部分で、PFIとしてなり得るものが、どの辺にあるのだろうかということをちょっと絞り込んでいこうと思います。
公共団体施行、1種、2種の場合、PFI事業者は、この後にリスクの度合いというものを考えていきますが、まず、できそうかできないのかという大きなくくりでいきますと、PFI事業者で業務代行、特定事業参加者、特建者制度、これは公共団体さんが再開発事業の施行者になってPFI事業者が業務代行をする、もしくは特定事業参加者、特建者になるということになります。
2番目に公共団体施行以外のもの、例えば公団さんがおやりになるような事業において、その場合は公共団体さんが特建者になって、その施設をPFIでやってもらう。公共団体さんが保留床を取得して、ある施設をPFIでやってもらうことは、可能性としてはあるのではないか。ただ、それが大きなリスクになるのかどうかが問題ではないかなと思います。
【PFI事業のメリット・デメリット】
先ほど申し上げました、公共団体施行でPFIをやっていくということで、PFI事業者が業務代行者になり得る、それがPFIとして適合するのかどうか、どの辺にメリット、デメリットがあるのかというところでございます。
メリットとしては、事業の初期でございますので創意工夫は図られるだろう。しかし、事業の将来を見込んだもの、それから、事業代行でございますので保留床処分の負担というものが非常に難しいだろうというところで、PFIとしてはなかなか難しいのではないか。この辺で三角であるとか丸であるとかというのを一般論的につけさせていただいておりますが、三角であるから難しいと単純にいい切れないところはあると思います。もちろんその地区における条件も加味していかなければいけないとは思いますけれども、一般論として業務代行をPFIでやっていくのは、将来のリスクがみえなくてなかなか難しいのではないかと思います。
それから、特定事業参加者にPFI事業者がなるということにつきましても、なかなか難しいところがあるのではないかというところでございます。
次のところで、先ほどは特定事業参加者、今回は特定建築者制度で建物の部分をやるというところで、公共団体さんが再開発の施行者になっていて、PFI事業者は特建者になるという場合でございますが、メリットとしては、建物に限定されるということでリスク管理は可能な中で民間も創意工夫が図られるのではないか。PFIの手法としては1つBOTというものを考えられるのではないだろうかと。特建者でございますので、施設を取得するというところからするとBOT方式というものになるのではないか。
デメリットとしては、設計から本当に民間の創意工夫が発揮できるのだろうかといったところとか補助金の問題、そういうものがPFIで再開発をした場合に、補助金が同じように出るのか、BOTで出るのだろうかといったところは、まだペンディングになっているところでございますので、こういうデメリットがあるというところではございますけれども、1つの建物に限定をしているというところであれば、PFIの適合性としてはあり得る話ではないのかなと思います。
それから、公共団体施行以外、例えば公団さんがおやりになるような事業で、施行者の方、公団さんが仮におやりになられている、そんな中で特建者制度を使って特建者に公共団体がなる。地方公共団体さんが特建者になられて、その施設をPFIでやる場合がこちらの上の部分でございます。そうしますと、PFI事業者からしますと、先ほどの再開発の事業主体と直接の関係にはなく、1回、公共団体さんを挟んで、あくまでも公共団体さんとの契約関係になるというところで、リスクをさらに管理しやすいのではないだろうか。PFI事業者は、特建者そのものではございませんので、この場合はBTOということで、逆に特建者の方に施設の所有権を移す必要がありますので、PFIでいけばBTO方式になるのかなと思います。
保留床の取得でございますが、これについても事業リスクは少ないというメリットはございますけれども、施設整備にPFI導入効果が得られない、民間が保留床をそのまま取得するのはコストがかかるというところもありますので、これもちょっとやりにくいのかなというところで、結果的には何らかの形で特建者になるという形、PFI事業者そのものが特建者になるという場合、それから、公共団体さんが特建者になられてPFI事業でその建物を整備させる場合というところが、いろいろ考えていきますとあり得るケースだろうなと思います。
その辺をもう少し細かく書かせていただきましたけれども、PFI事業者がそのまま特建者になるケースというところで、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、PFIでいきますとBOT方式になるというところでございますけれども、ポイントとしましては、今、国の方の建物についての再開発の補助金がPFIで出るか出ないかというところでいきますと、BOTについてはペンディングだというところが少し問題になってくるのかなと。イメージとしてはこんな形になるのではないかと思います。
もう1つ、公共団体さんが特建者になられる、公団さん等が再開発の事業者になって、公共団体さんがある施設の特建者になる。その施設の整備をPFI事業でやるというところについては、最後のケースでございますけれども、特建者の公募が不要になるので、初期の段階でもPFIの実施がさらに可能になるのではないだろうかというところで、この辺の可能性は非常に高いのではないかと思います。
【具体事例】
最後に、説明の半ばで、市街地再開発をPFIでやった事例として7号館を含めて3つあるといった中で、国分寺さんの市民文化会館の整備の事業、横浜市さんがおやりになられた戸塚の事業スキームをご説明させていただくと、先ほどご説明をしました特建者の位置づけ等がおわかりになるのではないのかなということで、簡単にご説明させていただこうと思います。
国分寺市さんの市民文化会館の整備でございますけれども、まず市街地再開発事業としては基盤整備公団さんが事業の施行者になられていると。それに対して、国分寺市さんがこの施設の特建者になっていると。まず1つ、そういう事業の枠組みというものがございます。
今度、この特建者であります国分寺市さんが、この施設を整備するに当たってPFI事業者を公募して、このPFI事業者が施設の設計・建設、引き渡し、特建者が施設の所有者になって、BTO方式で維持管理・運営をさせて、それでサービスの対価を払う。ここでもう1つ関係が出てまいりますので、真ん中にいらっしゃいます国分寺市さんは、市街地再開発という中の特建者であり、PFI事業という枠組みでいきますと公共施設等の管理者等という2つの立場があるということになります。
今回、国分寺市さんは、もう1つ表がありますが、PFI事業者が施設を利用される方から独立採算的にあるサービスを提供して、お金を受け取るという独立採算の形もこのPFIの中に一部ございますので、その場合については、PFI事業者さんは国分寺市さんからサービス購入のこの形とは別に床を借りて、床のお金を返す、払うというスキームも国分寺市さんの場合はあるというところでございます。
最後でございますが、横浜市さんの戸塚西口の仮設店舗につきましては、まず横浜市さんが市街地再開発事業の施行者であると。この施行者さんがPFI事業者に対して、仮設店舗の設計・建設、譲渡、運営をしてくれよということでPFI事業をしていて、まず、ここにPFIとしての枠組みがあるということです。
PFI事業者は、先ほどの国分寺市さんとも同じでございますけれども、ある独立採算の事業を中で抱えていまして、仮設店舗を提供すること以外に仮設店舗の入居者の方と維持管理業務を契約していると。それでサービスの対価の流れはこのようになり、PFI事業者は箱の整備、仮説店舗の整備については、横浜市さんの方からもらっているけれども、でき上がった後の維持管理については入居者の方からいただいているということになります。そのような流れになっております。これが全体として市街地再開発事業の枠組みの中に入っているというところでございます。
以上でございますが、再開発事業をやっていく中で、実際にPFIを活用していく上では、私どもとしましては、現時点では特建者制度という形が一番、官民にとってリスクをうまく分けられるのではないかということをご報告をさせていただきまして、お話を終わらせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
【平成15年度第3回 自治体PFIミニフォーラム(平成16年1月29日東京都で開催)での講演概要】
講 師 紹 介
株式会社三菱地所設計 都市開発マネジメント部 PFIコンサルティングチーム チームリーダー 城 一眞
略歴: 昭和61年4月 三菱地所(株)入社、平成13年6月より現職 以後、
・東京都昭島市:昭和公園整備事業PFI導入可能性調査
・福岡県前原市:前原市図書館等複合施設PFI導入可能性調査
・大分県津久見市:津久見市市庁舎・消防庁舎整備事業に係るPFI導入可能性調査
他、多数のプロジェクトを担当。
連絡先: 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-2-3
電 話:03-3287-5598
ファクシミリ:03-3287-3210
株式会社三菱地所設計 都市開発マネジメント部 PFIコンサルティングチーム 鈴木直樹
略歴: (株)フジタ等を経て平成14年6月(株)三菱地所設計入社 以後、
・国土交通省・文部科学省:中央合同庁舎第7号館整備等事業に関するテクニカル・
アドバイザリー業務
・富山県:富山県警察学校整備等事業に関するテクニカル・アドバイザリー業務
・花京院1丁目第二地区第一種市街地再開発事業総合コンサルタント業務
他、多数のプロジェクトを担当
連絡先: 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-2-3
電 話:03-3287-5598
ファクシミリ:03-3287-3210