株式会社三菱総合研究所地域経営研究センターPPPコンサルティンググループ
主席研究員 グループリーダー 清水 憲吾 氏
【はじめに】
レジュメに医療経営コンサルティンググループリーダーと書いてあるのですが、私、去年の10月から医療のチームのグループリーダーとPPPのグループリーダーを兼務しています。今日は、まさに両方の話題なので全然違和感ないのですけれども・・・。お客様のところに行くと、やはり、病院の方も今までの医療の分野のコンサルタントに加えて、経営の改善とか、施設整備とか、事業手法といったことについてもアドバイスしてくれということが多いものですから、実は、この2つのチームは、私が兼務しているというだけではなくて、三菱総研の中でもかなり交流があるということになってきています。
それは自治体病院だけだろうということではなくて、民間病院でもこの手の話は結構多いのです。それは何でかというと、やはり、安倍政権も医療改革に必死で取り組んでいらっしゃると思いますけれども、今ちょっと正念場になっていまして、大学病院、地方の病院、あと、チェーン展開していらっしゃる病院さんとか、悩みがない病院はほとんどない状態です。私も、今日午前中、ある病院さんにちょっと来てといわれて行ったのですけれども、300床の病院です。経営は順調にいっているということですけれども、建物の建てかえどうしたらいいのかわからない。そもそも、どのようにして職員のモチベーションを保っていったらいいのかわからない。要するに、看護師や医師のモチベーションを保つためにはどうしたらいいのだろうということもあって、そうなると、今までの医療コンサルタントの範囲を超えて、いろいろな方面のコンサルティングの知恵を集めてということで、ちょっと話が長くなりましたが、私、10月から医療の方のリーダーもやっています。
今日のテーマは「病院へのPFI導入について」ですから、地方自治体立病院を意識してお話しします。基本的な考え方と留意すべき点の解説を中心にという副題をつけさせていただきました。
内容としては、病院を取り巻く環境、今ちょっとお話ししましたけれども、社会の要請の変化認識。私たちコンサルタントは、PFIの用語でいうとアドバイザーというのですけれども、アドバイザーはこのように認識していますということ。
あと、なぜ自治体病院に対してPPPなのかということですが、これは、なぜ病院に対してもPPPをやるのだということです。一般的にPFI、PPPというのは定着したと思われていいと思うのですが、病院は開院したのはまだ3つです。これからどうやってPFIが増えていくのだろうということですが、この辺のことをお話ししたいと思います。
あと、実際、PFI、PPPを入れるとして、どういうことを目指すのか、目的です。ここからは、今までの事例、私の経験も踏まえていろいろなバリエーションがありますということをお話ししたいと思います。このあたりで、なるほど自分たちはこっちを目指して今検討しているのだなとか、自分たちはこれだったらPFIを使わない方がいいのではないかというような議論を頭の中でしていただければいいなと思います。
4番目に、導入するとなったら、今どんなところが論点になっていますかということで、例えば、私たちがプロポーザルコンペといったときには、こういう点が論点ですよねなどと出すことの一端をご披露したいと思います。
最後に、「終わりに」ということで、この4つでお話ししたいと思います。
【病院をとりまく環境】
1つ目の病院を取り巻く環境の話ですけれども、社会の要請の変化の認識ということで書いたのですが、今とにかく医療分野の改革命題があって、これは何なのかといろいろ私なりにみたのです。国の進める医療改革は、とにかく保険制度の持続。維持という人もいますけれども、維持というと守っているみたいですから持続しようということです。それで、医療費の適正化が不可欠ですよというようにいっています。これ、抑制といってもいいと思います。
実際には、患者と家族の視点でのQOLの向上というのが現場では絶対条件ですから、これは、明らかにトレードオフの関係にあると私は思います。
医療費の適正化ということで、薬価と医療材料費の改定とか、DPC、包括支払い方式の導入とか、保険給付の見直し。一方で生活習慣病の対策とか、公的給付費を抑制していく。ありとあらゆることが一遍に来ている感じだと私は思っています。
でも、やはり、国民はいい医療を受けたいということです。お金はだすから、いい医療を受けたいという人たちはいっぱいいるわけです。高齢者10%負担だとして、今、医療費の大体15%~17%しか自費負担にならないわけですけれども、お金はあるといっても保険制度の中でやっている分には、残りの9割は他の人が負担しなければいけないわけですから、これに対して非常に難しい問題が起きてきていて、やはり、現場が患者さんとか、家族の方のQOLを満足させる形で改革していかなければいけないわけで、すごく難しいところに現場は直面していると思います。
医療機関とか民間事業者、あと、最近台頭してきているのは保険者の議論です。保険者をどうするか。あと官側です。新しい体制の構築が急務だというようにいわれています。効率化ということになるとどうなのかということでつくったのがこの資料ですが、地方の病院で、公的病院の経営悪化は深刻だと思います。さぼっているとか、悪いとかというのではなくて深刻になっています。医師、看護師の不足があって、リクルーティングが最重要課題にというのをつくったのですが、これももしかしたら古いかもしれません。こんな話題はとっくにわかっているという話ですが、このこと自体が話題にされるようになったのは最近のことです。この先どうなるかわからない。ただ、現状ではリクルーティングが最重要課題になっていくことは間違いないです。医師、看護師、薬剤師の派遣事業が解禁されて人材派遣やりますよ、といっているのですけれども、地方の病院が生き残るためには本当に医療人が働きがいのある地域医療体制ができているかどうかです。今まで病院の中を対象とした議論はすごく多かったのですけれども、地域医療に関する議論というのはなかなかない。
実際、診療報酬制度が改定されて、対応がおくれて経営が悪化します、淘汰の時代へなど、こんな論調をよくみるのですけれども、「経営あっての医療ですよ」と今はもういっています。この言葉、多分3、4年前までは結構新しい言葉で、そのころには何をいっていたかというと「病院経営と医療サービスは両輪です」とかいっていたのです。それがもう変わってしまって、最近は「経営あっての医療ですよ」というように変わってきていて、医療関連サービスの外部委託の一層の促進をなどという時代に変わった。この間だけでも医療人は相当な衝撃を受けて日夜業務に当たっているわけです。
民間ビジネスの方は何を考えているかというと、淘汰の時代というのがかぎでして、淘汰の時代に対して民間人は何を考えているかといったら選別しているということです。民間企業が病院をサポートしようと思って新しく入ってくるときには、勝ち組ビジネスという選択をしてきます。これちょっと残酷な言い方なのですけれども、病院が淘汰されると思えば勝てるところにしか来ない。淘汰されるであろう病院には民間は来ないということです。これは、民間の方ならば当然の選択なわけで、ただ、医療の世界がどうもそういう世界ではなくて、株式会社参入の話でもわかるように、お金のことで余りいろいろなことを考えたくなかったということもありますので、目をそむけてきているところもあったのですけれども、実はもうこういうことになってしまっているのです。
だから、PFIとかPPPで民間の力をかりようと思っても、その病院が勝ち組なのか、あるいは手をこまねいて、調子が悪くなるのかによって、民間は手伝ってくれないです。あるいは、手伝ってくれてもエースの人材を出さない。こういう恐ろしい時代になっているのです。
現場の方はわかっているかもしれない。院長先生とかわかっている方もいらっしゃる。とういうことで、PFIの話題にまだ入らないなと思われるかもしれないのですが、民活といっても、まず、自らの方を何とかしなければいけない状態の中に今は置かれているということです。
規制緩和の話については、適正化のために規制緩和しますよということで、医療分野ではこんなことをやっている。広告規制とか株式会社の病院経営もありではないかとか、混合診療の検討とかいって、これも日々、議論されていますが、その中に、公的機関の効率化ということで独立行政法人です。それから、運営だけを委託するような指定管理者制度とか、ここに初めてPFIとかアウトソーシングという言葉が出てくるということです。あくまでもPFI、PPPというのは、公的機関の効率化のためなのだなというように意識していいのではないかと思います。
予防分野の方で保険者機能の強化と介護の方はケアハウスなどということを書きましたけれども、この3つが実は相互に関連して、予防から介護というのはなかなか――本当は医療にはかかわらないで予防から介護にいくのが幸せかもしれませんが、こういうのが相互に関連して規制緩和が今なされている状況にあります。
私、正直にいいますとPPPグループのリーダーしかやっていなかったときは、病院に行くと、「PFIをご検討ですか、なるほど」とかいっていたのですが、医療グループのリーダーを兼ねますと、やはり、ここの話、医療機関としての運営の方向性の議論をしないことには話にならないのです。今思うと、やはり、ちょっと片手落ちということはないのですけれども、PFIの話をするとき、この話から入らないとだめだなと最近思っています。三菱総合研究所で私がPPPグループでPFIの仕事をしているときに、決してこちらをないがしろにしていたというわけではないのですけれども、私はPFIの専門家で医療は専門家に任せていますといっていたのですが、もう、これ一緒にして考えないと議論は進まないということが最近わかりましたので、今日、ご披露しました。
【なぜ自治体病院に対してもPFI・PPPなのか】
こういった中で、なぜ自治体病院に対してPFI、PPPなのかということで、外部環境の変化認識ということです。
具体的には、一般論として自治体における民間活用の変遷というのを書いてみたのですが、バブルが崩壊した後、リストラ策としてアウトソーシングが増加している。コアコンピタンスに特化し、要するに自分たちの強みのところに特化して、ほかは外部資源に依存することで機動性のある経営を目指そうと。こういったことで体質改善策として注目されていますよと私、書きました。実は、この2つは、一番上に「自治体における」と書いていますが、「日本の企業における」と書いてもそのとおりなのです。自治体病院の現場に行くと、「最近、人増えないんだよね。採用増えないんだよね。人も減らさなくちゃいけないし、仕事ばかり増えてさ。だから、外注しなくちゃやっていけない」という人が多いと思うのですが、本当は、やはり、自治体が組織体として自分たちの体質改善策として民活をしていくのだというように思いたい。ただ、もともとは1960年代からアウトソーシングというのはあったそうなので、70年代~80年代、民間への業務委託が進んだ時代には、一般行政部門の職員数削減の動きがあったので、私が前段申し上げたような議論でどうも合っていたようなのです。ただ、その後、1993年の地方分権推進決議などというのは、明らかに行政体に求められる能力とか、機能が変わった転機です。それから、民間の活用制度も1999年とここに書いてありますが、PFI法ができてから一気にいろいろなメニューができてきた。別の場面でイギリスと順番が逆ですねなどという言い方を私はしたりしているので、もしかしたらお聞きになった方もいらっしゃるかもしれないのですが、日本の場合は、一番最初に大物のPFI法を成立させて、その後に独立行政法人、イギリスでいうエージェンシー化の話であるとか、民営化の議論であるとか、最近では、市場化テスト法、あと、指定管理者制度、アウトソーシング。これ、イギリスと全く逆の順番できたのですけれども、とにかく、2006年の市場化テスト法でほぼそろったという時代になっています。
自治体病院で何でPFI、PPPなのかというところにもう一回戻りますと、経営参謀役として民間を使いたいというニーズは多いです。さっきいったように、何がなんだかわからない時代に突入した。そうすると、変化が読めなかったらどうしますかといったら、変化に敏感になって機動力を生かせるような組織体に変わりたいと思いますよね。民間人は一般にそう思うわけです。自治体の職員は今まで何を思っていたかというと変化が読めなかったら、安全な方を読もうとしていたのです。確実な方を読もうとしていた。防護策を講じようと思っていたわけですけれども、これは、怖いから安全にということで確かにコストはかかるようになってくるということで、最近は、変化が読めないのだったら変化に動けるような体質に自分たちを変えようというように自治体も思っているわけです。PPPのアドバイザーというのは、それをどうやるかを支援している側になるわけです。
そうすると、経営の参謀役に民間の力をかりたいと。まだPFIにはほど遠いという感じですが、経営参謀役に民間が入ってきてほしい。経営コンサルタントが入っている病院はあるのですけれども、経営参謀役が欲しい。具体的にはパートナーシップ体制という運命共同体型の体制に入って、自分たちが公共性を保ちながら、民間の豊富な情報と人材、事業経営、運営ノウハウを活用したいということです。
一方で、何が必要なのかというと、それをやるために必要なのは公平性、透明性、競争性の確保。役割分担、リスク分担の明確化。お金をちゃんと払うということです。それから監視をしようということで、こういうことをやりながらパートナーシップ体制にいこうというので出てきている。
自治体は民間にできない業務を自分たちでやるということです。これがかぎだと思います。ここに私たちアドバイザーが入っていって、事業参画の会社、さっきいったように勝ち組ビジネスに乗り込んで来ようとする会社は、ここがよさそうだなと思ったら乗り込んでくる。そして、自治体のパートナーとして、役割とリスクを相互に理解して業務を遂行する。助言や情報提供なども重要な役割に今なっています。ほかのPFIで、ここまで民間事業者に求めるPFIがあるかなというと、余りないです。これが病院PFIの特徴の1つだと思います。ほとんどのPFIは、業務遂行のための助言などということをする必要はなくて、民間事業者の中で運営が完結しているケースが多いので、こういう助言という機能はないのです。ここには事業系のコンサルタントさんが入ったり、保険の関係が入ったりしているのですが、もう1つ大事なのは、住民やNPOさんで、受益者であり納税者であり監視役というようなことで病院PFIは入ってきます。住民やNPO――NPOはちょっと表現が横並びではないかもしれませんが、市民の方が満足されるような自治体病院経営をするための経営参謀役を民間に求めようという動きであります。
もう1つ、さっきいったように筋肉質の組織になろうということで、やはり、小さな政府への移行というのはあります。これ、どうしても自治体の財政縮減だというのですけれども、財政縮減も確かですが、変化が多い時代において自分の組織を筋肉質にしておいて、アウトソースできるところはアウトソースしておこうということです。場合によっては、アウトソーシング先をどんどん変えていけばいいわけですから、そういった動きというのはあります。とにかく、行財政改革をやるのだけれども、もう深刻化してきてしまったのでゼロベース、全くやらないというベースで見直しをして、職員が直接やるべきこと、とにかくこれを自分で探そうということです。こういった動きをして、民間に任せた方がいいものは任せましょうというのは組織戦略だという考えなのです。バリュー・フォー・マネーなどという概念はここで初めて出てくる概念です。やっとPFIに近い言葉が出てきたなという感じで、経営参謀役などというのは、PFIのとき現場ではなかなか出てこないのですが、バリュー・フォー・マネーはこういうところに出てきます。
今までの話の中で、今までの民活とどこが違うのかという話ですが、これもふるさと財団さんのセミナーなどで私が使っている図なので、ごらんいただいた方もいらっしゃるかもしれないのですが、とにかく、今のPPP、パートナーシップ型の手法というのは性能発注だということです。今までは仕様書を業務内容で書いていたのだけれども、サービスの水準に変えてきた。皆さん、自分の好きなように理解したらいいと思うのですけれども、インプット型で、インプットのやり方をこうインプットしてくれよというように指示したのか、こうアウトプットが出るようにしてくれよというように指示するかという違いです。アウトプットとかアウトカムとかいっていますけれども、とにかく、こうなるようにやってよというように発注する。そうならなかったらあなたの責任だよということで、リスクの最適配分です。民間に任せた方が効率よくできると思ったら、任せてしまうということでリスクの最適配分という概念がある。
リスクの最適配分をしているのですから、本当にできているかどうかを確認してから支払いましょうということで業績連動支払いという言葉を使っています。PFIもPPPの1つですけれども、性能発注、リスク最適配分、業績連動支払いというあたりがキーワードで出てくるのはこのあたりです。それを総合評価一般競争入札で、リスク管理の確かさも含めて審査しましょうというように今なっています。これは、あくまでも整理という感じです。こういったPPP手法というのを使って、要するに、任せられるものは任せましょうということです。自分たちは、自分たちしかできないことに特化していく。なおかつ、任せた人に対して任せた仕事から生まれてきたようないろいろなノウハウなどは大いに助言してもらおうではないか。こういう動きが全国の自治体の幾つかの箇所であったというように認識しています。
パートナーシップ型事業手法の特徴ですけれども、簡単にいってしまえば、委託側である自治体側はマネジメント能力、受託者側は事業遂行能力を発揮する。パートナーシップで両方とも勝ちましょう。一般のPFIがこうなのです。後から出てきますが、病院は自治体側はマネジメント能力だけではないのです。当たり前ですが、医療行為をやらなければいけないです。病院PFIを実現したのは受け手の成長です。とにかく、任せられる企業があらわれるということが前提ですから、受け手となる企業があるかどうかというのは確認しなければいけない。相手がまだ全然その状態になっていないとき、これをやってしまうと大変なことになります。残酷な言い分になりますが、勝ち組の病院には売り込みがある。ということは、任せられる企業が売り込みに来る。調子の悪い病院には来ない。だったら、無理に任せないで自分たちでやった方がいいという選択もあると思います。一概にはいえないのです。
それから、次、契約技術というのは、弁護士にアドバイスを受けて何とかなります。問題は次です。モニタリング技術です。要するに、彼らを監視するということですが、自治体職員の能力が問われます。モニタリングの技術をもった職員がいないのであれば、性能発注型の発注をしてしまうと非常につらいことがある。本当にちゃんとできているのかどうかよくわからないというのであれば、もういいなりになってしまいますので、PPPというのはすごく難しい手法です。
最後にもう1つ、ふるさと財団さんはPFIを推進・普及する立場だと思いますし、私もPFIのアドバイザーですからそうなのですけれども、民営化とか外部化、アウトソーシングというのは一回出してしまうともとに戻せないのです。これは注意していただきたいと思います。「何だ、三菱総研の清水はPFIは危ないといっているのか」というように聞こえるかもしれないのですが、そうではないのです。欧米は公務員の方と民間人の方が交流しているというか、個人の経歴の中に、日本でいうと公務員をやっていた時期と民間人をやっていた時期が入っている人がいっぱいいるわけです。私は、医療の経営を一貫してやってきていますというのだけれども、自治体職員の立場でやっていたり、民間の立場でやっていたりします。ということは、人の流動がありますから、戻そうと思ったら民間人を登用してやればどうにかなるのではないかという発想がもしかしたらあるかもしれません。けれども、日本の場合は一たん民間側にしてしまうと、戻そうと思っても公務員側に人がいないのです。だから、もう戻せなくなってしまうわけです。一回出したものが破綻すると出し続けなければいけないという現象もあり得ますので、これはよく注意した方がいいと思います。
しかし、パートナーシップ型の事業というのは、こういうことに注意していただきたいと思います。普通の外注だったらとっかえひっかえしていればいいし、自分たちの職員を切ることなくやっていますから、これはやめたとしても余り影響がないのです。さっきいったように、自分たちの組織をぎゅっと小さくして、今まで職員がやっていたことを全部手放してしまうことになりますから、向こうがだめになったら、今度は自分たちの組織を大きくしなければいけませんから、そんな容易なことではないのです。こういうところ慎重にやってほしい。
主なメリットとデメリットを書きましたけれども、これも一般論で書かれていることなので後でみていただいた方がいいのですが、私の感覚では、デメリットはほとんどリスクマネジメントの技術で克服できます。モニタリングの技術ともちょっと関連しているのですが、このデメリットをつぶせないと思うのだったらPFIはやらない方がいい。このメリットが大きくないと思うのだったら、これもやらない方がいいです。でも、踏み切っている自治体さんはこっちが大きいと思っている。それから、デメリットは無視したのではなくてリスクマネジメント技術で何とかなると思っているのです。パートナーシップ型事業手法の特徴としてこのようなことを書いておきました。
繰り返しになりますが、職員に求められる能力は施策目的、何でこの病院設置しているのか、何のために運営しているのか、これを明確にしましょう。目的を実現して、継続・発展させるためのマネジメント能力は絶対になくてはだめだと私は思います。これは、私の部下が整理したのですが、施策の立案と施策目的の明確化です。目的を実現するために事業手法は何をとるのか。PFIがいいのか、直営がいいのか。それから、民間の活用する能力は自治体側にどれぐらいありますか。さっきいったように自治体側に能力がないのだったら変な手法を使ってしまったらえらいことになってしまいますので、こういったことも考えて適切な手法を採用しましょう。最適な手法を選択するのはアドバイザーではないです。自治体です。自分たちの組織のためにやるのですから、これをやるのが職員の仕事です。これをやるよということになったらば事業を遂行していかなければいけないわけで、当然、バートナーシップ型の事業ですからリスク認識をして、うまくいかなかったら手を打つ。さっきいったように不可逆ですから、だめか、それでは、来年はこれは内部でやりましょうとか、そういうことはできませんので、早目に手を打つとか、対応能力が要求されます。あと契約と交渉能力です。この交渉能力というのは、自治体の職員、今までなかなか経験したことはありませんが、こういうのも必要になってきています。
事業が始まったらモニタリング、事業の軌道修正がすごく大事です。さらには、将来への備えがあります。内部にノウハウを蓄積して、こういう人材を育成しなければいけないといっているのです。今までやったことないことをPFIでやりますので、このノウハウを中にためて、自治体の中で人材育成に使わなければいけない、これは仕事です。企業ではナレッジマネジメントなどといっていますけれども、これは絶対に要る。あとは、この全体を議会とか市民に説明しなければいけないので、説明責任がありますねというようにいっています。
職員にはこれらのことをやるということが求められていて、PPP導入の成功のための前提条件なのです。だから、簡単にいうと何のために病院をやっているのですかということがいえないのならば、PPPを使うと危ないということです。マネジメントができないのだったら長期契約を結んだら危ないということです。
ただ、自治体職員をけなしているばかりではなくて、本業への特化だと思っていて、本来もともと公務員、地方自治体職員というのは、こういうことを得意としている人たちですから、これは絶対できると思うのです。今日は民間の方もいらっしゃるということですけれども、自治体の方が多いので、ちょっと苦言っぽいことが続いていますが、次のスライドは民間企業に求めることです。1つ目に書いてあるのが、今まで自治体職員がやってきたことを一部やってくださいということです。ここ、大事です。今まで話してきたので、多分、ぱっと入っていただいたと思うのですけれども、今まで自分たちがやってきたことを民間にやらせるということです。今まで外注がやってきたことを、まとめて1ヵ所にして出しているのではないです。そうするとSPCの仕事というのはほとんどなくなってしまいますから。SPCの仕事というのは、あくまでも自分たちがやっていた仕事を出すのだということ。なぜそういうことをするのかというと、公共調達の制約がなくなるからです。
今まで自治体職員は、民間に発注しようと思ったら予算をとって入札をして選んで、長期契約を結ぶのであれば2年とか――1年でやって随意契約でもう1年ですかね――いろいろなことをやっていたのですけれども、民間同士ですから、SPCは3ヵ月おきの契約をしてもいいし、長期契約で違約金を払って全部切ったりしても全然構わないということで、民民契約による調達が実現します。当然、包括契約も実現してくるということになってきて、これらの業務を全部まとめてやってもらうよということで包括契約ができてしまうということです。これを全部やってくださいよということです。この1つ目に書いてあるのが、SPCの業務ということになります。
2つ目は、実際の業務をやる会社、掃除をやったり、給食を出したりする会社。そこは実現手段の裁量をもらいましたから、今まではああしろ、こうしろといわれていたけれども、自分たちで考えてやれるようになったのだから、民間事業のときは割とそういうのをやっていますので、このままできるねというような感じです。
最後がPFIのF、ファイナンスの話です。あくまでもサービスの性能発注ということですから、サービスの品質をみきわめないと初期投資のよしあしが判断できないです。このスライドを映す機械、これは高かったです。 100万円はしないまでも20万円とか30万円ぐらいする。これ本当に30万円の価値があるのかなというと、実際に5年ぐらい使ってみて、なるほど、故障しなかった、価値があったねということになるので、その性能をみきわめてから払います。ですから、後払いの形になります。そうすると、民間事業者は、本当はお金が欲しいのだけれどもなということですけれども、自分でお金を立てかえてきて、この機械を買って納品して、後でお金をもらうということで、DBFOのFがここで出てくるのです。デザイン(設計)、ビルド(施工)、ファイナンス、オペレート、Fは3つ目の要因として民間企業に求めることというように思います。
大分PFIっぽくなってきたと思うのですが、PFI事業に求める性格としてこんなことが書いてありますけれども、PFIの講座ですとこういうことを最初にいうのですが、病院でPFIというのならば、こんな話は小さな話だなというのが今までにわかっていただけたらいいなと思います。あと大体20分しかなくなってしまいました。
【自治体病院がPFI・PPP導入でめざすこと】
では、目指すことですけれども、私は目的のバリエーションというように思いました。病院PFIで目指すことはこういうことですというように、この後の近江八幡市の病院のことでも出てきますけれども、一例として、近江八幡ではああいうものを目指しましたというようにご説明があるはずです。日本全国の病院で全部これを目指すというのはあり得ないと私は思っていて、それはなぜかというお話をしたいと思います。
PPPのときに公共と民間との関係は何ですか、パートナーシップですよねとかいうのですけれども、実はパートナーシップってよくわからないという話もあるので、私は赤字で書きました。ごく自然に考えて、当然の関係にすればいいというぐらいの気持ちでいてくださいということです。自治体の職員の方が民間のスタッフとか会社の能力をみて、なるほど、これは任せた方がいいな、これは自分がやった方がいいなと思ったら、こうしようという非常に自然な関係、これを考えた方がいいと思います。パートナーシップ関係なのだからこうしなければいけないとか、そんなことをいう必要は全然ないと思います。
ただ、大事なのは、自治体の職員がやっていたことを民間にやらせるわけですから、これです。民間は、「わかりました。やらせてください」とかいってきても本当はわかっていないケースが多いと思うのです。やらせてくださいというのはすごく正しい表現で、やらせてほしいのです。だけど、余りわからないということで、なじみの薄い業務や事業でパートナーシップを結ぶというのは、公務員にとって民間人のことを知るというのは難しいですけれども、民間人にとって公務員のことを知ることはもっと難しいのです。これ、すごく当たり前のことで、公務員の人は家に戻れば民間人ではないですか。当たり前ですけれども、公務員専用のスーパーに行っているわけではないし、公務員専用の電車に乗っているわけではないですから、公務員の方は民間人の方をわかっているのです。しかし、民間人は公務員のことがなかなかわからないのです。今まで自治体の中でやっていたことが。ですから、これは結構丁寧に説明してあげないとわからない。わかったようで民間人はわからないです。
そういったことで、公務員の方がごく自然に考えて当然の関係ですけれども、民間の方にはよくわからないことも多いというのが、PPPでの公共と民間との関係の現実です。ただ、民間の方はわからないというと公務員の方に嫌われてしまうし、頼りないと思われるので、わかっているというように一生懸命いうけれども、本当はわかっていないことがあるわけです。それをちゃんと考えてあげないと危ないよと。それで、どういう関係を結ぶかは自治体によって違う。だから、さっきいったように集まってくる企業のこと。それから、やはり、地元の企業をどう使うかという話もあるでしょうから、「これにどう任せるか、自分たちの力量からいって、これは任せた方がいいかな、いや、おれたちの方がいいぞ」と、こういったことをやれば、バリエーションは絶対あるはずです。病院の運営の内容をどうやって決めるのですかというと、いっぱいあります。自治体の病院の経営方針によってどんどん変えていくというのだったら、変えていくところは民間と約束しない方がいいです。ここは確実だなと思った部分の業務を民間へ出せばいいのです。
あるいは、民間主導で、ある程度民間のいうのに任せて運営もやっていかなければだめかな、民間病院に近いような経営をするかなということによって体制は違うと思います。それから、地域の医療計画との関係によっても違うと思います。それから、ちょっと残酷な職員能力の話と参画が期待できる民間能力との比較です。
この3番目が今日の私の話のキーワードみたいになっているのですが、実は、ほかのPFIではこういうのは余りないのです。さっきいったように、病院が非常に改革にさらされているので、民間が勝ち組ビジネスでみているという意味で注目してほしいと思います。
あと、自治体の人事政策の問題があると思います。それから、期待する内容で全然違ってくる。
では、期待する目的を具体的に。PFIの導入効果のうち、新たな体制づくりという効果があるのです。内閣府のホームページでPFIの導入目的3つ。1つ目は、低廉かつ良質な公共サービスが提供される。安くていいもの。大体これでバリュー・フォー・マネーの話は済んでいるのですが、あと2つついていまして、公共サービスの提供における行政のかかわり方の改革になりますよというように書いてあるのですね。3つ目は、民間の事業機会を創出することを通じ経済の活性化に貢献する。3つ目は余り意識していないです。やはり、日常業務でPFIで意識しているのは、この1つ目と2つ目、特に病院の場合は2つ目の話が非常に大きい。何でかというと、自治体病院はPFIを入れることによって三者体制になるのです。自治体職員、医療スタッフである医師、看護師、薬剤師に加えて、医療周辺サービス提供者、包括業務のパートナーとして助言などをするという新しい者が出てくるわけです。今までは治体病院は、どういう体制かといったら、多分、1つの体制か2つの体制だと思っている。民間企業は小さいのがいっぱいついているだけです。コンサルタントがついていたりすることもある。実際には、PFIをやると三者体制になりますから、三者体制というのはなかなかおさまりがいいですよね。大体自分たちが組織経営をするときも三者体制だと結構うまくいくのです。PFIをこういったことに使っていこうということで、行政のかかわり方の改革につながるというようにいっている人が多いです。具体的には、新しい3つ目の主体が運営に参加する効果があるということと、もう1つは、公共発注の制約を外して民間病院で使っている手法が最大に使えるということです。
医療スタッフの人事については、独立行政法人などの手法を使わないとPFIでは手が入らない。周辺業務については、さっきいったように民民発注になりますので、民間病院で使っている手法が使えるということで、この2つ、民間病院で使っている手法を使うことができる3つ目の主体が自治体病院にあらわれるという効果です。
私の今までの幾つかの少ない経験でいうと、自治体病院さんでPFIに踏み切ったのはこのケースが一番。外向けには次のコストが安いというのを使っていますけれども、私のお客様はさっきいった2番です。行財政改革の意味でPFIを使っている人が多いです。とはいえ、外に出すときには、やはり、安くていい方がいいよねということで低廉という効果を目的としているケースもあります。これは、初期コストを下げるだけではなくて、運営コストを合わせたライフサイクルコストを下げるということです。ここはPFIの中でさんざんいっているのでしつこいのですけれども、決して初期コストを下げるためにPFIを入れるのではないということです。余りそういうことをいうと、今日ゼネコンさんもいらっしゃるかもしれないですが、同じものをつくったら安くならないでしょうといわれてしまいますので、そのとおりで、同じものをつくっても下がるのではないのです。運営コストが下げられるような建物をつくるから、トータルでコストが下がるのだというように理解しています。運営に必要かつ十分な施設の整備をするから安いのです。それから、さっきいったように調達の仕方が全然違いますから、コストダウンになります。それから、デザインビルド、設計と施工だけではなくて、運営・維持管理もやるから下がります。維持管理費が下がるような建物をつくるということです。このフレーズもわっと見逃してしまうのですけれども、維持管理費が下がるような建物をつくるのです。だから、建物の費用は本当に下がったのをみてから払うという考えです。これが低廉の効果です。
デザインビルドというのは設計・施工の一括発注の話とか、DBOというのは、PFIのFをとったやつですけれども、よく出てくるのですが、設計と施工とオペレーションをやる会社を一遍に選んで、それぞれ契約を結んでいる新しい手法の1つですけれども、これいろいろな見解があるのですが、柔軟にいろいろなものを検討される方がいいと思います。安くするためだったらPFIだけではないですから、こういったことをいろいろ考えていく。しかし、決定的に違うと思うのは、PPP手法がこれとは違ってさっきいった体制の変革につながるということです。これはご記憶いただきたいと思います。
参考までに、PFIとデザインビルドの違いを私の言葉でちょっと書いておきました。何かのヒントにしてください。
もう1つ、良質な公共サービスの提供という効果があるわけですけれども、これは、PFI導入で自治体病院として必要な医療サービスの品質を向上させるというようにちょっと読みかえたのです。PFIを入れたら医療サービスの品質が上がる、そういう効果というのはどれくらいあるのかなということですが、自治体病院に対する社会的要請の変化に対応するために、やはり、もっと議論した方がいいと思うのです。自治体病院としてどんなサービスを実現するのですかという議論になって、またPFIから遠のいていくのですけれども、患者さん、いろいろ多様化してきている。さっきいったようにお金はあるから医療を受けたいという人はいます。年収の階層別に医療に対する不安のアンケートが出ていて、当たり前といえば当たり前ですけれども、年収の低い方は医療費が払えるか非常に不安だと。この先、私は医療を受けられないのではないかという不安をもっている。お金をもっている人は全然不安がない。こんなにいろいろな患者さんがいっぱい来るわけです。
もう1つ大事なのは、自治体病院、独立採算でやっているケースは別ですけれども、そんなケースはほとんどないですから、今は健康ですが、いつか病気になるかもしれないという納税者向けにどんなサービスをしておいたらいいのか。ちょっと待ってというのですけれども、自治体病院だったら地域医療の核にならなければいけない。今の医療改革は病院改革ではなくて医療システムの改革ですから、さっきいったように予防ってありました。予防に対してもどんなサービスをしていかなければいけないのかという議論はぜひしていただきたいと思います。
それに対してPFIは使えるかという議論をすると、私の関係しているPFIの案件では使えるという結論も出しているのです。だから、病院PFIでSPCを入れることによって予防に対しても何か新しい手が打てるのではないかということを検討しています。
次は、住民が自治体病院に求める、納得する公共サービスの質とは。それを実現するために、医療スタッフ向けに何をすればいいのか。これが特徴です。
あと、民営化というのは、自治体病院でなくしてしまえということです。それから、市場化テストというのがあります。
なぜ今、自治体病院を存続させなければいけないのか。独立行政法人化というのがあって、独立させて民間の人事政策みたいなものをどんどん入れたりとか、それこそ民間型の発注も認めようではないかという施策もある中で、なぜPPPを使わなければいけないのか、PPPを使うと本当によくなるのか、あるいは独法化すると本当によくなるのか。こういう議論を盛んにしなければいけないと思っています。
ふるさと財団さんが出されているPFIの図というのは下にかいてあるきれいなやつなのですが、こういう図がかいてあるのです。自治体側とSPC側に明快な責任の分離があるのです。SPCは、出資を受けて会社をつくって銀行からお金を借りて、運営と管理と建設をやってくれというように書いてあるのです。ここに私が線が引いたのですが、明確なわけです。PFI契約。ところが、医療スタッフがありますので、例えば、このモニタリングに対しても医療スタッフというのが出てくるのですけれども、実際には、現場に密接に関与していますというのは当たり前ですが、医療行為というものを通じて患者とか地域住民に出しているわけで、SPCというのは自治体向けにサービスを出しているのではなくて、医療スタッフに出しているケースがほとんどです。検体検査は別に患者にやっているのではなくて、医療スタッフにやっているといっても間違いではないと思います。そうすると、こんなところに官側の人がぽんぽん出てくるわけです。ということで、これはマネジメントがすごく難しいのです。だから、良質な公共サービスの提供などというところになるとすごく頭を抱えてしまうのです。だからといって、良質な公共サービスの提供、低廉な公共サービスの提供、組織の改革というので何も全部やる必要はないので、一番目につくのは、私の場合は体制の変化ということではないかなということでご披露したわけです。
【PFI・PPP導入の際の主な論点】
主な論点。実は、ここが皆さんお聞きになりたかったのではないかと思うのですが、逆にいうとこの議論はいろいろなところでやられているので、私はさっと流します。
実際、PFIのアドバイザーたちはこれを売りにしているわけですから、断片的にご紹介する程度にしたいと思います。私たちが思っているのは、事業手法の比較というのが可能性調査で結構出てくるのですけれども、私は、個人的には事業手法の比較というのは政策議論だと思います。バリュー・フォー・マネーを最大化するスキームを検討するといっているのですけれども、基本的にこの病院必要なのですか。廃止という残酷な議論。自治体病院である必要があるのですかといったらもう民営化です。ここのところはPFIアドバイザーの出る余地はないと私は思います。三菱総合研究所は政策に関するアドバイザーでもあり続けたいと私は思っていますので、もちろん、やりますけれども、基本的にはパートナーシップ型事業の中の事業手法の選択の中とこの民営化の話は別だと思っているのです。
さらには業務委託とか、独立行政法人化とか、市場化テスト法というのはちょっと別ですけれども、独立法人化するかPPPでやるか、どちらがいいですかというのもまた別でして、自治体の関与の度合いが全然違いますので、やはり、この事業手法の比較と選択のときには政策議論を大いにやるべきだと思います。どういう自治体病院にしたいのですかという度合いによって変えていくべきだと思います。
独立行政法人化した方が全部自分たちでやっていますから、基本的には自治体の関与度合いは高い手法だと私は思います。
PFIだというようになってくれば、やっとなじみの深い話題になると思うのですが、最初にいわれるのは建物の設計をどうするかです。建物設計を重視するのであれば、病院の医療スタッフの意向とかこだわりをどこまで重視するか。医療スタッフのこだわりを重視するのだったら実施設計まで公共で行いなさいということなのです。オリジナリティー、要するに自分たちのこだわりですから、これをどこまで要求水準書で表現し切れるのですかという話があって、多分、できないから実施設計までやってしまおうという話で、こういうケースはあります。VE提案を求めている病院の例があります。それは、この青のゾーンの考え方をとっています。あるいは建設を含まないPFI、今、八尾で開院しましたけれども、彼らはこのパターンをとったということになるはずです。
それから、民間の意見を尊重したいなというのであったら、基本計画までは公共で行って、こうなってくると民間に所有させるという芽が出てきますから、BOTの芽が出てくる。こっちだと大体実施設計をやってしまっているからBTOかなというので、あえてBOTは消しました。別にBOTでやっても構わないですけれども、これだとBOTかBTOか意見が分かれてくる。
民間に任せよう、そのかわり要求水準をきっちり示そうといえば、BOT、BTOの両方が使えるし、むしろ、BOTのケースが増えてくるかもしれません。なぜかといえば、民間に任せて設計させたのだから、民間に所有させて不具合があったらどんどん改造させた方がいいという考え方になると思います。
それから、業務をどこまで含めますかということですけれども、これは政令に含める8業務も入れられますよというのが今定着してきました。
大事なのはこれです。職員人事計画との関係で徐々にふやしてもいいのではないかと私は思っています。性能発注にこだわらず、仕様発注の形式も混在させてください。すき間をなくすために包括化しているのですが、例えば、やみくもに何でも入れてしまうとよくないと思います。条件として要求水準書にちゃんと書けることです。それから、それをやることによってバリュー・フォー・マネーがある、効果があるというように担保できること、保証があること。それから、さっきいった受け手がいることです。1人とか2人しかいないと競争ができませんから、これはPFIに含めるときには気をつけていただきたいと思います。
これがもう1つの最近の話題だと思います。医療材料や薬品の調達をどうするのか。民間病院や独立行政法人で事例がありますので含めようではないかという考えが最近出てきていると思います。契約期間とか考えると民間病院とか、独法でやっている契約期間というのは、PFIの期間に比べて短いのです。だから、独法でやっているからいいのではないかというのですけれども、それは契約期間が違うので、よく考えた方がいいですね。それから、見直しをどうするのかとか、担保する方法で単価で担保するのか、手法で担保するのか、割引率で担保するのかとか、いろいろなこと、自治体さんは苦労されています。それから、そもそもどうやって評価するのかとか、材料や薬品の調達については、今ホットな話題です。
それから、電子カルテをどうするかです。これは、近江八幡さんの話にも出てきますので後でゆっくり聞いてください。建物とはライフサイクルが違う。だからどうするのだというのでいろいろ苦心されています。
それから、資金調達。BOTとBTOでリスク移転が違うので、融資団における監視機能をどう考えるかということも含めて議論になっています。これも財団さんのホームページです。建設会社に対して施設建設費は支払われるのだが、PFIは延べ払いにするという考えですけれども、さっきもいったように設計をどうするかによってBTOのケースもBOTのケースもあるので、一概に病院PFIでは資金調達をどうしたらいいのかというのはわからないと思います。一連のいろいろなことを考えた上で、皆さん、後払いにするのか、あるタイミングで一括払いにするのか考えていただけたらいいと思います。あるタイミングというのは、何も施工費が出るたびに毎年払う必要はなくて、完了検査を受けて一括払いでも構いませんし、あるいは、開業して1年たった時点で全額払っても全然構わないのではないかと思います。私は、それぐらいの気持ちでいます。実際、プラント物のPFIなどは試運転が終わったあとに一括払いしますので、性能がわかったならば払うという考えでも構わないのではないかと思います。
【終わりに】
最後に、終わりにということですが、バリュー・フォー・マネー最大化の挑戦というのは契約終了まで続くということをご理解いただきたいと思います。いろいろいっていますけれども、私もアドバイザーですから自分たちの宣伝にもなるのですが、PPP経験が豊富な応募者が出てきますので、それに対抗するためには、やはり、経験のあるアドバイザーを登用されるのは不可欠だと思います。これは、私がというより財団さんも基本的にはこういうお考えで、こういうセミナーをやってみたり、アドバイザーの派遣業務などというのもやっていますので、これは決してセールストークではなくて、こういったことは記憶にとどめていただければと思います。
ちょっと1分過ぎてしまいましたけれども、今日のメインのスピーカーの事例を聞いていただくための参考になればと思って、ちょっとお時間をいただきました。どうもありがとうございました。
【平成18年度第4回 自治体PFIミニフォーラム(平成19年2月16日開催)での講演概要】